腹黒御曹司の一途な求婚
 久高くんはいつの間にかエレベーターのボタンを押していたようで、不意に目の前のエレベーターの扉が開いた。当たり前のように私の手を握って、久高くんは高層階用のエレベーターに乗り込んでいく。
 
 エレベーターが上昇し始めると、ただ握るだけだった久高くんの手がもぞもぞと動いて、私の指の隙間に彼は自分の指を滑らせて絡めた。
 男の人の骨張った関節が指の側面に触れる。

 硬くて、大きくて、温かい、自分の手とは全然違う手。いやに意識してしまい、全神経が触れている部分に集中する。
 
 私は何も話すことができなかった。
 一言でも口にしてしまえばその瞬間、頑丈に鍵をかけて心の奥底にしまっていた感情が溢れ出してしまいそうな気がして。

 ほどなくしてエレベーターが停止し、久高くんはさっきまでのフラフラ具合が嘘のようなしっかりとした足取りで、私の手を引いてエレベーターを降りた。

 内廊下に敷かれたモノクロのストライプ柄の絨毯にヒールのトップリフトが沈み込む度に、私の胸を刻む鼓動が加速していく。
 等間隔に並んだ玄関扉を三つ通り過ぎた、四つ目の扉の前で久高くんは足を止めた。
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