腹黒御曹司の一途な求婚
　アスプロ東京は、アメリカを本拠地として世界八十ヶ国に千五百件のホテルを展開するホテルグループ、オルサ・リゾーツが運営するラグジュアリーホテルだ。
　
　アスプロとはギリシャ語で白を意味する。「真っ白に生まれ変わる極上な体験」をコンセプトに、充実した最上級のおもてなしを提供することを目指している。
　
　二百ある客室全てから東京湾を望むことができ、都心にいながら都会の喧騒を忘れる静謐なひと時が味わえる、というのが謳い文句だ。

　私は今日から、このアスプロ東京の料飲部のレストランサービス課で、アシスタントマネージャーに就任する。
　これまでのキャリアが認められ、責任ある役職を任されて、気合いは十分。
　入り組んだ通路を闊歩する私の表情には、実際やる気がみなぎっていた。

　オフィスフロアにある自分のデスクにたどり着き、上司のマネージャーに挨拶をする。先輩であるもう一人のアシスタントマネージャーと、他の同僚とも引き合わされ、無事顔合わせを終えた次は、各レストランへの挨拶回りだ。

　皆それぞれ忙しいので、地図を片手に私一人で向かう。初めての場所で早速放り出されるのはちょっと心許ないけれど、新人ではないので致し方ない。
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