花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
***
「ここが木花の部屋で、こっちが風呂、トイレはそこな」
あのファミレスの日から三日後、私は颯くんの住んでいるタワーマンションの部屋にいる。
今日は休みだという彼から部屋の説明を受ける。
「私の部屋なんてあるの?」
「もともとあんまり使ってない部屋があるんだ。家具だけ揃ってるから好きに使って」
「こんなお家、すごいね」
「何度も来てみろって誘ってたのにな」
はぐらかして断り続けていた私はバツの悪さに苦笑いを浮かべる。
あの後、颯くんから結婚を前提に一緒に暮らすことを提案されて、覚悟を決めて乗ることにした。
それで信用してもらえて、櫂李さんがきちんと手術を受けられるならそれでいい。
左手の薬指に輝いていた櫂李さんとの結婚指輪は、颯くんから貰った左手首のブレスレットに変わった。
昨日初めて開けた箱に入っていたのは、繊細なシルバーのチェーンのブレスレットだった。
まずはお試しでってことで、私の荷物は着替えを少しだけ持って来た程度。
荷物のほとんどは春海家のマンションに置いてある。
「で、寝室はここ」
「え……」
寝室は私室とは別で、大きなベッドが一つだけ置かれている。
「そういうのはゆっくりでいいんじゃなかった?」
眉を寄せながら彼を見る。
私がそういう気持ちになるまで待ってくれるって言ってくれたはず。
「ここが木花の部屋で、こっちが風呂、トイレはそこな」
あのファミレスの日から三日後、私は颯くんの住んでいるタワーマンションの部屋にいる。
今日は休みだという彼から部屋の説明を受ける。
「私の部屋なんてあるの?」
「もともとあんまり使ってない部屋があるんだ。家具だけ揃ってるから好きに使って」
「こんなお家、すごいね」
「何度も来てみろって誘ってたのにな」
はぐらかして断り続けていた私はバツの悪さに苦笑いを浮かべる。
あの後、颯くんから結婚を前提に一緒に暮らすことを提案されて、覚悟を決めて乗ることにした。
それで信用してもらえて、櫂李さんがきちんと手術を受けられるならそれでいい。
左手の薬指に輝いていた櫂李さんとの結婚指輪は、颯くんから貰った左手首のブレスレットに変わった。
昨日初めて開けた箱に入っていたのは、繊細なシルバーのチェーンのブレスレットだった。
まずはお試しでってことで、私の荷物は着替えを少しだけ持って来た程度。
荷物のほとんどは春海家のマンションに置いてある。
「で、寝室はここ」
「え……」
寝室は私室とは別で、大きなベッドが一つだけ置かれている。
「そういうのはゆっくりでいいんじゃなかった?」
眉を寄せながら彼を見る。
私がそういう気持ちになるまで待ってくれるって言ってくれたはず。