花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
「待つよ。でも木花が本気だったら一緒に寝るくらいできるだろ?」
試すみたいな言い方。
歪な関係がよく表れてる。
「……わかった。だけど、絶対に強引なことはしないで」
彼に釘をさすように言う。
タワーマンションの高層階にあるこの部屋は、広いリビングの大きな窓からベリが丘の街から海まで一望できる。
部屋全体が明るくて、この部屋で颯くんと二人で過ごす方が一人でいるより気が紛れるかもしれない。
「きれいなキッチンだね。颯くん全然料理しないんだ」
「だいたい外食かデリバリー」
「じゃあ夕飯は私が何か作るね。あとで買い物に行ってくるよ」
「木花」
キッチンに立つ私を彼が背後から抱きしめた。
櫂李さんとは違う匂いがする。
「やっと俺のものになった」
彼の言葉に、否定の言葉も同意の言葉も出てこなかった。
私の気持ちは櫂李さんのものだけど、颯くんの気持ちもわかってしまうから。
だけどこうして颯くんの体温を感じながら、私は櫂李さんのことを考えている。
彼は今どこで、何を考えて、何をして過ごしているんだろう。
その夜同じベッドに入った私に、颯くんは本当に何もしないでいてくれた。
そんな彼の隣で私はまた櫂李さんの目のことを考えてこっそり泣いてしまっていた。
試すみたいな言い方。
歪な関係がよく表れてる。
「……わかった。だけど、絶対に強引なことはしないで」
彼に釘をさすように言う。
タワーマンションの高層階にあるこの部屋は、広いリビングの大きな窓からベリが丘の街から海まで一望できる。
部屋全体が明るくて、この部屋で颯くんと二人で過ごす方が一人でいるより気が紛れるかもしれない。
「きれいなキッチンだね。颯くん全然料理しないんだ」
「だいたい外食かデリバリー」
「じゃあ夕飯は私が何か作るね。あとで買い物に行ってくるよ」
「木花」
キッチンに立つ私を彼が背後から抱きしめた。
櫂李さんとは違う匂いがする。
「やっと俺のものになった」
彼の言葉に、否定の言葉も同意の言葉も出てこなかった。
私の気持ちは櫂李さんのものだけど、颯くんの気持ちもわかってしまうから。
だけどこうして颯くんの体温を感じながら、私は櫂李さんのことを考えている。
彼は今どこで、何を考えて、何をして過ごしているんだろう。
その夜同じベッドに入った私に、颯くんは本当に何もしないでいてくれた。
そんな彼の隣で私はまた櫂李さんの目のことを考えてこっそり泣いてしまっていた。