花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
「可愛らしいお嬢さんだもの。櫂李が描きたくなるのもわかるわ」
そこに〝子どもっぽい〟という意味が含まれているのは私でもわかる。
「可愛らしい、か」
櫂李さんは腕を組んで、含みのあるような言い方でつぶやいた。
「なによ、何かあるの?」
「木花は私のミューズなんだ」
櫂李さんがあまりにも普通に言うから、私のほうが驚いてしまう。
「お前、よくそんなキザなこと恥ずかしげもなく言えるな」
これに関しては如月さんに同意せずにいられない。
「木花にしか言わないよ。それくらい特別なんだ、彼女は」
彼は余裕のある笑顔を見せる。
「まあなんでもいいけれど、そろそろ桜以外も描いてくれないかしら。春櫂は桜専門の画家になったのかって噂になってしまうわよ」
「桜専門か。それも悪くないな」
櫂李さんが冗談めかして言う。
「もう! 売る方の身にもなってちょうだい。だいたいあなた、春に大きな絵を総合病院に寄贈したっていうじゃない。今までそんなことしたことないのに、どういう風の吹きまわし? 春は毎年仕事の絵だって請けないくせに」
あの絵のことだ。
「春は……絵を描かない?」
あの絵だけじゃなくて、五月に結婚して今の家に住むようになった時には描きかけの桜の絵がいくつかあった。
不思議に思って櫂李さんの顔を見上げて聞くと、彼はまた微笑んだ。
「描かないというより、描けなかったんだ。今までは」
「え?」
「春はどうにも創作意欲というものが湧かなくてね。だけど今年は木花に出会ったから何枚も描きたくなった。だから君は私のミューズなんだ」
彼が私を見つめて言うから、耳が熱くなってしまった。
そこに〝子どもっぽい〟という意味が含まれているのは私でもわかる。
「可愛らしい、か」
櫂李さんは腕を組んで、含みのあるような言い方でつぶやいた。
「なによ、何かあるの?」
「木花は私のミューズなんだ」
櫂李さんがあまりにも普通に言うから、私のほうが驚いてしまう。
「お前、よくそんなキザなこと恥ずかしげもなく言えるな」
これに関しては如月さんに同意せずにいられない。
「木花にしか言わないよ。それくらい特別なんだ、彼女は」
彼は余裕のある笑顔を見せる。
「まあなんでもいいけれど、そろそろ桜以外も描いてくれないかしら。春櫂は桜専門の画家になったのかって噂になってしまうわよ」
「桜専門か。それも悪くないな」
櫂李さんが冗談めかして言う。
「もう! 売る方の身にもなってちょうだい。だいたいあなた、春に大きな絵を総合病院に寄贈したっていうじゃない。今までそんなことしたことないのに、どういう風の吹きまわし? 春は毎年仕事の絵だって請けないくせに」
あの絵のことだ。
「春は……絵を描かない?」
あの絵だけじゃなくて、五月に結婚して今の家に住むようになった時には描きかけの桜の絵がいくつかあった。
不思議に思って櫂李さんの顔を見上げて聞くと、彼はまた微笑んだ。
「描かないというより、描けなかったんだ。今までは」
「え?」
「春はどうにも創作意欲というものが湧かなくてね。だけど今年は木花に出会ったから何枚も描きたくなった。だから君は私のミューズなんだ」
彼が私を見つめて言うから、耳が熱くなってしまった。