花とリフレイン —春愁切愛婚礼譚—
第拾肆話 全部
***
透子さんはやっぱり櫂李さんのことが好きなんだ。
それに……。
『どうせすぐに飽きられちゃうわよ。今までだってそうだったもの』
考えないようにしてたけど、やっぱりいたんだよね、過去に付き合ったりした女性が。
櫂李さんだって男だし、あんなにかっこいいんだもん、当たり前だよね。
透子さんとは? 駆け出しの頃から知り合いって、その間に何かあったのかな。
透子さんに会ってから数日経っても私はモヤモヤと考えてしまっていた。
家ではできるだけ考えないようにしているけど、櫂李さんは鋭いから私がこうやって考えていることに気づいているかもしれない。
「はぁ」
過去のことなんて考えたって仕方がないのに、つい憂鬱なため息をついてしまう。
「すみません、ミルクもらえますか?」
いけない、バイト中だった! と、お客さんの声にハッとする。
「って、木花?」
「颯くん!」
「え、何お前、ここでバイトしてんの?」
「うん。先週から」
茶色いカフェエプロンをつけた私はニコッと笑う。
ベリが丘総合病院のカフェは大手チェーンのフランチャイズ。
規模は普通の店舗より小さいけど店内のテーブルでお茶をすることも、テイクアウトもできる。
このカフェのバイトは始めたばかりだけど、飲食店の経験はいくつかあるから手順にはすぐに慣れてしまった。
おもな利用者はお見舞いの人や病状の軽い患者さん、それに病院のスタッフの人たち。
病院内のカフェなんだから、お医者さんの颯くんに会うのは当然だ。
祖母の担当をしてくれた人たちにもすでに何人か会っている。
透子さんはやっぱり櫂李さんのことが好きなんだ。
それに……。
『どうせすぐに飽きられちゃうわよ。今までだってそうだったもの』
考えないようにしてたけど、やっぱりいたんだよね、過去に付き合ったりした女性が。
櫂李さんだって男だし、あんなにかっこいいんだもん、当たり前だよね。
透子さんとは? 駆け出しの頃から知り合いって、その間に何かあったのかな。
透子さんに会ってから数日経っても私はモヤモヤと考えてしまっていた。
家ではできるだけ考えないようにしているけど、櫂李さんは鋭いから私がこうやって考えていることに気づいているかもしれない。
「はぁ」
過去のことなんて考えたって仕方がないのに、つい憂鬱なため息をついてしまう。
「すみません、ミルクもらえますか?」
いけない、バイト中だった! と、お客さんの声にハッとする。
「って、木花?」
「颯くん!」
「え、何お前、ここでバイトしてんの?」
「うん。先週から」
茶色いカフェエプロンをつけた私はニコッと笑う。
ベリが丘総合病院のカフェは大手チェーンのフランチャイズ。
規模は普通の店舗より小さいけど店内のテーブルでお茶をすることも、テイクアウトもできる。
このカフェのバイトは始めたばかりだけど、飲食店の経験はいくつかあるから手順にはすぐに慣れてしまった。
おもな利用者はお見舞いの人や病状の軽い患者さん、それに病院のスタッフの人たち。
病院内のカフェなんだから、お医者さんの颯くんに会うのは当然だ。
祖母の担当をしてくれた人たちにもすでに何人か会っている。