カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
「それでずっと私を探してたんですか?」

「それが大きなきっかけだった。でもお前はもう一つ忘れてるよ」

「もう一つ?」

お昼休みが終わる前の予鈴が鳴った。
五分後には五時間目が始まってしまう。

ここから教室までのギリギリの時間。
でもまだ話は全然終わっていなかった。

今日は職員会議があるから授業は五時間目まで。
その後すぐに終礼がある。

時間を気にした私を、先輩が引きとめるような目で見た。

「まだ行きません」

「ん」

「それで、もう一つってなんですか?」

「お前とあいつ…森川 悠太が待ち合わせしてた本屋。あそこで俺と砂雪は会ってる」

「え…」

思い出そうとしたけれど、私のどの記憶にも先輩の面影は引っかからない。

本郷先輩が転校した後のことなら、本郷 カナデの存在はもう噂になり始めてたはず。
忘れるはずが無い。

「学園入試の参考書を買いに行ったんだ。ズラって並ぶ本棚の前で俺は突っ立ってた。そしたら俺に向かってはっきりとした口調で喋りかけてきた奴が居た。買わないならどいてくださいって」

「それが私ですか?」

先輩は頷いて、思い出し笑いみたいにくすくすとおかしそうに笑った。

「一瞬であの時のあの子だって分かったよ。砂雪はなんにも変わってなくて、意志の強いその眼差しも、自信に溢れた口調も」

「私の特徴、なんか可愛げなくないですか?」

「だから憧れた。俺もお前みたいに強くなりたかった」

「えー…やだなぁ…可愛げないの…」

「可愛いじゃん。可愛くて可愛くていつもどうにかなりそうだ」

「もー、いいから!それで?」

「俺が持ってた参考書を見て、買うんですかって聞いてきた。迷ってるって言ったら、何年生ですか?って」

「あれ、ちょっと待ってください…それって…え?本郷先輩だったんですか?」

「思い出した?」
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