カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
「今でも色が…?」

先輩は首を振った。

「大丈夫。砂雪に会えたから」

五時間目はとっくに始まっている。
私と本郷先輩は二人で授業をサボった。
なんでか全然、イケないことだとは思わなかった。

「あの男の子と本屋さんの男子が同一人物だとは思いませんでした。面影が無かったし」

「ずいぶん変わったからな。顔ももう少し幼かったし身長もだいぶ伸びた」

「そうですよね!?今、何センチくらいですか?」

「百八十三」

その数字に心から感心してしまった。
私の記憶の中の、中一の本郷先輩は百六十ちょっとくらいだったはず。

「それに鈴城さんがね、遠足がヒントだって言ってたんです」

「みなみ?」

「…宿題だったんです。もうカナデを苦しめないでって。早く思い出してあげてって」

「あいつ…」

「先輩と鈴城さんは幼馴染ですか?」

「あぁ。産まれた病院も一緒なんだ。みなみのほうが二ヶ月先だな」

「あの…中一の時は?」

「みなみは小五から、俺が転校する中二まで海外に行ってたんだ」

「わー。ワールドワイドですね」

「だから俺のことを知らなかった。知ってたらきっとあいつなら加害者を殺してるよ」

「でしょうね…」

「転校したことを知って、みなみも三年生から俺と同じ中学に入ったんだ。俺をいじめてた奴らのことも顔見知りだからさ、本当に殺しに行きそうな雰囲気だったからヒヤヒヤしたよ」

「なんか…想像つきますね」

二人で顔を見合わせて苦笑いした。

「鈴城さんはずーっと先輩の味方だったんですね」

「そうだな。感謝してるよ」

私が知らない壁を二人で乗り越えたんだ。
一番苦しかった時に本郷先輩のそばに居れなかった自分を、鈴城さんはすごく責めたと思う。


だからこそ、そばに居られるようになって、先輩を守ろうって誓ったのかな。
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