カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
そりゃ知ってるに決まっている。
だって目の前に居るんだし。

「えっと、今までお話していた本郷先輩と今の先輩が同一人物でしたら、知ってますね?」

「そうじゃなくて」

「はい?」

「俺のこと、入学前から知ってただろ」

「それは…はい。本郷 カナデっていう存在を知らない人のほうが珍しいと思います」

「だからそうじゃねーって!」

本郷先輩はなんだかイライラしてるみたいに見えた。

初対面で私に悪態をついた愛想の無さとも違う。
ちょっと余裕が無いみたいな、焦ってるように見える。

「先輩?どうしたんですか?」

開いていたドアを先輩が腕を伸ばして閉めた。

先輩が一歩、私に近づくから、その分後ろに下がったらすぐにドアに背中が当たって逃げ場を失ってしまった。

「先輩?」

少し腰を屈めた先輩の顔が、近づいてくる。
その動作は一瞬だったけれどはっきりと認識できたのに、催眠術をかけられたみたいに身動きが取れない。

本郷先輩のくちびるが私の首筋に軽く触れた。

何をされているのか分からなかった。

先輩の髪の毛が当たってくすぐったい。
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