カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
「今日は美術部はやってないんですかね」

「そうみたいね」

辿り着いた美術室に電気はついていなくて、ドアもきっちり閉められている。
中も真っ暗で誰かが居る気配は無い。

その代わり、隣の美術準備室からは薄く明かりが確認できた。

照明の明るさでは無いと思う。
カーテンを開けた時にわずかに明るくなる室内みたいな。

今日は曇りだ。
太陽は出ていない。

五時を少し過ぎている。

ドアがほんの少しだけ開いている。
ほとんど暗い状態の美術準備室に誰かが居ることは確かだった。

中村さんに手招きされて、私達は静かに静かに足音に気をつけながら、ドアのすぐそばの壁に張り付くようにしてしゃがんだ。

「鍵、どうやって開けたんでしょうか。あの子、美術部じゃ無いですよね」

長谷川さんの耳元でかなり小さい声で言う。
長谷川さんはノートに走り書きで伝えてきた。

長谷川さんは美術部に友達が居て、調査に出発する前に連絡を取ったみたいだ。

美術準備室の鍵が半月くらい前から壊れていて、まだ修繕が済んでいないらしい。

長谷川さんも中村さんも、対象者の目的は美術部じゃなくて美術準備室にあること、侵入の為に鍵を壊したのも対象者だろうと分かっていたみたいだ。
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