カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
「ヒロムくん。今日もとっても綺麗」

「本郷先輩以外になんてレアキャラですね」

囁いた私に、中村さんが「人の好みはそれぞれだから」って言った。
確かに。私だって本郷先輩じゃなくて悠太が好きなんだから。

「入ろっか」

中村さんが言った。

「えっ。もうですか?」

「ややこしくなさそうだったらパッと終わらせちゃおう」

「はい…」

私達は立ち上がって、同時に深呼吸した。
中村さんがゆっくりとドアを開ける。
小さくカラカラって鳴って、暗かった美術準備室は、もう少しだけ明るくなった。

他の教室には無い独特なにおいが鼻をつく。
絵の具や様々な物が混ざったにおい。

デッサンに使うのか、人間の手を模った模型とかキャンバス、イーゼル、沢山の画材。

石膏で作られたダビデ像。
首から下は無い。

その像の前に佇む少女が一人。
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