カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
「誰!?」

暗い美術準備室の中で少女が私達を振り向いた。
石膏像とはもちろん色も質感も違うけれど、不健康に感じるくらい、少女の肌も白い。

「こんにちは。生徒会です」

「生徒会…知ってます…凄い人達なんですよね」

「別に凄くはないけど」

「…会長さんは居ないんですね」

「カナデさんですか?今日は代理の私と、書記の長谷川…それから………新人の須藤だけです」

「雑用です」

中村さんが、肩書きを与えれていない私を気遣ったことが分かったから、自分で言ってへへって笑ってみた。

私以外の誰も笑わなくて、あれ、なんだか場違いじゃない?なんて思いながら、私はみんなから一歩後ずさった。

「ここで何をしてるんですか?」

長谷川さんがノートを開いて、いつでも記録を録れる体勢に入る。

少女は私達を品定めするように順番に見て呟いた。

「なんでここに」

「見回りです」

「見回り?」

「半月ほど前から準備室の鍵が壊れてるって美術部員から報告があったの。先生達も修繕依頼をすっかり忘れてたみたいで。だめよね。不用心だわ。だから私達が状況を確認しに来たってわけ」

中村さんは最初から決めていたセリフみたいにスラスラと言ってのけた。
その姿はもはや探偵のプロだった。

「たまたまですか?」

「そう、たまたまよ」

少女は深く息を吐いて、美術準備室の電気をつけた。

一年生は美術の授業が無い。
美術部員でもない私はこの教室に入るのは初めてだった。

暗がりで見るよりも乱雑で埃っぽく見える。
ダビデ像と少女の白が余計に際立って見えた。
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