カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜

好きな人

いつもより帰ってくるのが遅かった私をお母さんは心配していた。

生徒会でトラブルがあってちょっと長引いたって説明を信じてくれたみたいで、ゆっくりお風呂に入ってきなさいって言ってくれた。

シャワーを浴びて湯船に浸かっていたら、せっかく冷め始めていた熱がまたぶり返してしまいそうだったからいつもより早めに上がった。

夜ごはんを食べて、明日約束してるから早めに寝るねって言って、自分の部屋に向かった。

明日は悠太と二人だけでお出掛け。
あんなに楽しみにしていたし、洋服もヘアスタイルも入念に選ばなきゃって思ってたのに、そうする気力が湧かなかった。

鈴城さんがくれた鎮静剤の効果は絶大で、嫌な感じがスーッと引いていくのが分かるのに、体がおかしくて集中できそうもない。

本郷先輩に触れられたところが未だにジンジンと疼く。
錯覚かもしれない。
汗も引いてるし変な動悸もしないのに、先輩が残した熱だけが引いてくれない。

薬のせいじゃないのかもしれない。
本郷先輩の苦しそうな吐息、熱を帯びた視線、いつもはちょっと冷たいのに妙に熱を持った指先。

先輩の表情が脳裏に焼きついて、ジッと目を瞑っていることも辛い。

こんなに大切な日の前日になんて酷いことをするんだろう。

悠太に会いたい。
悠太が好きだ。

なのに、本郷先輩が言った「お前の恋を壊す」って言葉がいつまでも耳の奥で鳴っていた。
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