カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
本郷先輩は私の何を見て選んだんだろう。

生徒会長をしていた経歴?
入試もトップだったらしいし…それだけで私を選んだの?

でも違う気がする。
本郷先輩は成績や内申点だけじゃなくて、過去の私を知っているみたいだった。

私が思い出すことを先輩に強要されたからじゃない。
私自身がそれを思い出さなきゃ、本郷 カナデという人物をいつまでも分からないままな気がする。

「砂雪ちゃーん」

一生懸命予算案を組んでいる戸田さんがテーブルのほうから私を呼んだ。

「はい!?」

「そろそろカナデさんのこと助けてきてあげてくれる?」

「え、私がですか?」

「まだ肩書を与えられてないあなたの仕事」

戸田さんがにっこり笑った。
「雑用」とは言わない優しさと、有無を言わせない圧があって余計に怖い。

「えー…私が行くより鈴城さんのほうがみんな言うこと聞くんじゃー…」

「だーめ!お願いっ砂雪ちゃん!」

「えー…」

「私と戸田さんは今日依頼には行けないからさ。カナデさんには絶対行って欲しいから。もう時間もヤバイし」

「中村さんも行けないんですか?」

「予算、今日までに決めないと」

「戸田さんもまた行けないんですね」

「ごめんねー。私も早く砂雪ちゃんと行ってみたいんだけど」

「ううん。大変なお仕事をありがとうございます。分かりました!私、本郷先輩を迎えに行ってきますね!私が皆さんの力になれることなら頑張りたいので」

「ありがと、砂雪ちゃん。気をつけてね」

鈴城さんが私の制服のリボンをキュッと整えた。
不思議と気合が入った気がする。

「あ、砂雪ちゃん、一口でもジャスミンティー飲んでく?好きでしょ。ちょっと気持ち落ち着けて行こ」

長谷川さんが私のティーカップにジャスミンティーを淹れてくれた。
ジャスミンの香りが鼻口をくすぐって、本当にリラックスできそうだった。

「ありがとうございます。ほんとにホッとしました」
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