カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
行きだけで気持ちが疲れてしまった私は、公園に到着したらただボーッと整備された芝生を眺めてしまった。

「早く探すぞ」

「あ、はい」

夕方過ぎなのに公園の利用者は多かった。

学園同様、本郷先輩に釘付けになる女性もいっぱい居て、同年代以外の目も惹いちゃうことに、もはや感心すらしてしまう。

その分、隣に立って歩くことがいたたまれない。
絶対不釣り合いだって思われてるし。

別に彼女なわけじゃないからどう思われたっていいんだけど、本郷先輩の隣に居るだけで卑下される対象になってしまうんだろうな。
それは先輩にも罪はないんだけど。

「なぁ、アレ」

「え?」

先輩の目線の先にはカップルかな?
男女がベンチに座って、女性は空を見上げている。
その女性の手を握って、男性はずっと女性を見つめていた。

黒髪の綺麗な女性。

本当だった。
この中から「黒髪の綺麗な女性」を探せと言われたら、迷わずあの人に辿り着くだろう。

胸の下まである艶やかな黒髪が風に流されてそよそよと揺らぐ。

あの女性を象徴する言葉として一番相応しいと思う。

「行くぞ」

「もうですか?」

「なんの為に来たんだよ」

「そうですけど…。なんて言って話しかけるんですか?生徒会って言うんですか?」

「言わない。あくまでも生徒会は依頼には関与してないってことになってるからな」

「でも外部の方なら関係ないんじゃ…」

「お前なぁ…。外部は学園から漏れた口コミで依頼してきてんだぞ?調査してんのが生徒会だったって広まる可能性もあるだろ」

「はーい。ごめんなさい」

「で、今からお前は俺の彼女。話合わせろよ?」

「えー」

「つべこべ言うな」

「はぁい…」

カップルに向かって歩いていく本郷先輩の後ろ姿をしばらく眺めていた。

見え始めた夕陽のオレンジ色に染められた背中が、まるでドラマのワンシーンみたいだった。

他校の生徒だろうか?
女子高生達が「アレ、ほらあの学園の!」って噂し始めている。

このまま人が集まってきたらマズイ。
名前を出される前に早く依頼を済ませないと!
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