カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
振り返った先輩が、私がついてきていないことに気がついてぶんぶんと手招きした。

早くしないと怒られちゃう。

「何やってんだよお前は」

「綺麗だなって思って」

「何が?」

「夕陽がですよ!」

本郷先輩が、なんて絶対に言ってあげない。
そんなこと言ったら何されちゃうか分かんないし。

「こんにちは…あー、こんばんは?かな?」

先輩がごく自然にベンチの男性に話しかけた。
男性は一瞬不思議そうな表情をしたけれど、すぐに人懐っこい顔で微笑んだ。

「夕陽、綺麗ですね」

「えぇ、とても」

答えたのは女性のほうだった。
世の中のケガレなんてなんにも知らないみたいな、澄んだ声だった。

「突然すみません。お二人があんまり気持ちよさそうに過ごされてたので。夕陽がお好きなんですか?僕達もよく来るんですよ。な?」

「え…えぇ」

突然振られた私は女性の真似をして「えぇ」なんて微笑んでみたけれど、私にはその言葉も仕草も似合わない。

現に先輩が笑いそうになってるし。
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