カラダもココロも甘く激しく溺愛してくる絶対的支配者様〜正しい恋の忘れ方〜
「お外の空気って気持ちいいでしょ?肌を撫でる風も。匂いも。この場所が一番気持ちいい気がするの」

「そうですね。芝生も綺麗だし穏やかだし。私もそう思います」

「ふふ。そうなのね」

「二人は…あぁ、あの学園か」

男性が言った。制服だけですぐに学園がバレてしまったようだけど…。

「あれ?君、どこかで…」

本郷先輩を見て言いかけた男性の言葉に胸がドキッとした。

ヤバい。この男性は学園のことを知っている。
依頼者だもん。知らないはずがない。
本郷 カナデだって気づかれたら生徒会長であることも知っているに違いない。

どうしようかとあたふたしていたけれど、男性は自分が気にかけたことが本当はどうでもいいことみたいに、また女性に向き直った。

「天気予報は夜から雨になってたけど降るかなぁ」

男性の言葉に女性は「降らないわ」って言った。
「雨のにおいがしないもの」って。

空は晴れていて、夕焼けも綺麗なオレンジ色だ。
雨が降る気配はどこにも無い。

「綺麗なオレンジ色ですね」

言った私に、女性は私のほうを見てにっこり微笑んだ。

視線はこっちに向けているのに女性は私を見てはいなかった。
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