俺様御曹司は逃がさない
「演技下手すぎんでしょ~。0歳児でももっとマシな演技するって~」

「九条様」

「んあ?」


うつ向きながら九条へ近づく。そして、ゆっくり見上げた。

こんな作戦がこいつに通用するのとは思えないけど、もしかしたら……の可能性に賭けた。


「あたしはただ……九条のことが心配なの」


あたしが出せる最大限の可愛い声、上目遣い、さりげないボディータッチ。

すると、あたしを見下ろす九条の動きがピタッと止まって、思考も何もかもが停止しているのか目が点になっている。

あたしの成功ビジョンは、頬を染めてモジモジする九条だったけど、これは……どういう状況だ?

ま、この作戦が通用した……とは言い難いけど、ある意味成功でしょ。

あたしは石のように固まっている九条に合掌をして、ススッと院内に入った。


「えっと、整形外科……整形外科……2階」


階段を使おうとしたら、“ワックス使用中のため、エレベーターをご利用ください”と規制線が張ってあった。


「あーーもうっ、急いでるのに!!」


なかなか下りて来ないエレベーターに、めちゃくちゃ焦っているあたしはボタンを連打しまくっていた。こんなことしても変わらないし、ボタンが可哀想なのは分かっている。でも、奴が……奴が来てしまうっ!!

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