俺様御曹司は逃がさない
次の瞬間、ヒラッと何かが落ちるのが視界に入った。

あたしと九条は同時に目線を下げる。


「あ」

「…………ぎやぁぁぁぁーー!!!!」


ベチィィンッ!!


あたしはなんっの躊躇なく、フルスイングビンタを九条に食らわせた。

びしょ濡れ状態で浴室から飛び出し、脱衣所から出ようとした時、バンッ!!と物凄い勢いで脱衣所のドアが開いた。


「今の叫び声は何ですか!?」

「きっ、霧島さんっ!!」

「何故、そのように濡れているのですか?」

「く、九条がっ!!」

「おい、七瀬!!!!」

「ひぃっ!?」

「と……とっ、柊弥様ぁぁ!?」


九条の左頬に真っ赤な紅葉がくっきりと残っている。紛れもなくあたしのビンタの痕だね、あれ。

どうりであたしの右手がジンジンと酷く痛むわけだ。


「てんめぇ……ご主人様に向かってフルスイングビンタとはいい度胸してんじゃねーか」

「いやっ、それはその……思わず手が出てしまったというか、滑ってしまったというか」


ちゃんと腰にタオルを巻いて浴室から出てきた九条は、物凄い剣幕であたしの目の前まで迫ってきた。


「とっ、柊弥様!!今すぐ冷やす物をお持ちします!!」


霧島さんはあたしを救うこともなく、ビュンッと走り去った。

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