俺様御曹司は逃がさない
ひょこっとあたしの顔を覗き込んできた九条が、目を見開いている。


「……お前さぁ」


口元を押さえているあたしの手を優しく掴んで、ゆっくりと引き離した九条。


「あっ、あのっ、違うの……これはっ……」

「誘ってんの?」

「へ?」

「お前、マジで気をつけた方がいいよ。つーか、俺以外にその顔すんの禁止な」

「いや、ちょっと……言ってる意味がよく分かんない」

「そうか。だったら分からせてやるよ」

「えっ!?」


後ろから抱き寄せられて、頬をムニュッと掴まれたと思ったら、鏡の方へ顔を向けさせられた。


「こういう顔」

「…………」


目は潤み、頬を染めて耳までほんのり赤い。


「これ、俺以外に見せんなってこと。オッケー?」


コクコク頷くとパッと離れて、日焼け止めをあたしに渡してきた九条。


「んじゃ、後は自分で塗れよ~」


手をヒラヒラさせながら去っていった。


「……なんなの、あいつ……ムカつく」


全く余裕が無かったあたしに比べて、九条は何事もないような振る舞い。余裕というか、本当に大したことないって感じの反応だった。

やっぱ慣れてるんだろうな、こういうの。


・・・・結局、圧倒的敗北感。


「ああ、もうっ!!腹立つ!!」


悔しい。場数の違いを見せつけられたわ。

いつか見返してやる……そう心に強く誓った。

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