だって、そう決めたのは私
「あ、そう言えば中川さん……中野さんのお宅は、おせちは作るんですか」
「ふ、どちらでもいいですよ。面倒ですよね、すみません」
「いえいえ。大事なところです」
「……ですかね。おせちは、どうだろうな。彼に時間があったら、作るんじゃないでしょうかね。私は何一つ、役に立てませんけど。大掃除担当なので」

 今年は黒豆煮るのかな。あぁ昆布巻きも欲しいな。話をしながら、年々渋くなった好みのおせちが思い浮かぶ。ここ数年は宏海が作ってくれるから、それを楽しみにしているけれど。それも……あと何回食べられるだろう。横を歩く池内さんの鍛え過ぎな二の腕が少し当たる。ムキムキというか。ムチムチというか。宏海と違いすぎて、並んで歩く距離感が難しい。


「あ、そっか。中川さんが作るんですよね」
「えぇ。お恥ずかしながら」
「いいと思いますよ。好きな方、得意な方がやったらいい。二人共苦手だったら、一緒にやったらいいんです」

 驚いた。今の若い子は、こうやって考えるのか。私たち世代ならば、家事は全て女がやって当然と思われた。そう思わぬ人もあったが、それも稀。大抵の人間が、そういう母親を見てきてしまったから、違和感も覚えず刷り込まれていたのだ。そんなことを言っていた彼らは皆、今も幸せに暮らしているんだろうか。
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