だって、そう決めたのは私
「この角を曲がると、だんだん森というか林が多くなるんですけど」
「あぁ本当だ」
「それで……こちらです」
「え?」
裏手に林があることは聞いていた。しまった。今の角で別れるべきだった。あぁ、時、既に遅し。彼の手はもうインターホンを押している。
『はい』
「池内です」
『ん? 何か忘れた? ちょっと待って、開けるね』
昔ながらのインターホン。カメラなどない。宏海の声が微かに聞こえて、しまったな、とまた思う。逃げられは、しない。
「何忘れたの? 池内くん……ん? え、カナちゃん?」
「奥様、お連れしました」
何故かニヤニヤしている池内さんを見てから、おずおずと宏海と目を合わせる。ははは、と笑うしかない。実家に泊まることは彼も知っているから、まぁ何となく分かってくれればいいんだけれど。
「じゃあ、僕はこれで」
「あ、池内さん。すみませんでした。ありがとうございます」
「いえいえ。それでは良いお年を」
こうして深々とお辞儀し合うと、年末だな、と思う。ニコニコっと微笑みを交わした後で、帰ると思った池内さんが、何故か宏海に声を掛ける。仕事の話か、と思ったが、彼は何故か、満遍の笑みでサムズアップしただけ。一体、どういうキャラクターなんだ。意味が分からず、クエスチョンマークが頭に並ぶ。ここで掘り下げても仕方ないし、とりあえず宏海と一緒に手を降って見送った。彼は何度も振り返ったけれど、別に今生の別れではない。角を曲がる時にまたこちらを見た彼は、大きく手を振ってから消えていった。
「あぁ本当だ」
「それで……こちらです」
「え?」
裏手に林があることは聞いていた。しまった。今の角で別れるべきだった。あぁ、時、既に遅し。彼の手はもうインターホンを押している。
『はい』
「池内です」
『ん? 何か忘れた? ちょっと待って、開けるね』
昔ながらのインターホン。カメラなどない。宏海の声が微かに聞こえて、しまったな、とまた思う。逃げられは、しない。
「何忘れたの? 池内くん……ん? え、カナちゃん?」
「奥様、お連れしました」
何故かニヤニヤしている池内さんを見てから、おずおずと宏海と目を合わせる。ははは、と笑うしかない。実家に泊まることは彼も知っているから、まぁ何となく分かってくれればいいんだけれど。
「じゃあ、僕はこれで」
「あ、池内さん。すみませんでした。ありがとうございます」
「いえいえ。それでは良いお年を」
こうして深々とお辞儀し合うと、年末だな、と思う。ニコニコっと微笑みを交わした後で、帰ると思った池内さんが、何故か宏海に声を掛ける。仕事の話か、と思ったが、彼は何故か、満遍の笑みでサムズアップしただけ。一体、どういうキャラクターなんだ。意味が分からず、クエスチョンマークが頭に並ぶ。ここで掘り下げても仕方ないし、とりあえず宏海と一緒に手を降って見送った。彼は何度も振り返ったけれど、別に今生の別れではない。角を曲がる時にまたこちらを見た彼は、大きく手を振ってから消えていった。