極上溺愛契約婚で甘やかされて~エステで出会ったセラピストは御曹司でした~
 帰宅した後も、私達は無言が続いた。無言のままの玲になんて声をかけたらよいか分からなかったというのもある。だが、夕食を食べる前に玲がようやく口を開いた。

「……雪乃さんは大丈夫ですか?」
「えっああ、はい。けがはしてないです」
「それなら良かったです。すみません、自分の中の気持ちに整理をつけるのに時間がかかっていました」
「ああ……」
「十和を苦しめていたのは美幸だった。その事を深く理解したのと同時に、彼女が殴られているのを見ているとああなるのも無理はないなと思いました。かわいそうとは思えなかった」
「……私も同じく、です」

 確かに馬乗りになって一方的に殴られ、気を失った美幸の事を私もかわいそうだとは思えなかった。それどころか身体を動かす事も出来なかった。それだけ彼は傷ついたのだろう。

「……雪乃さん。改めて私はあなたを幸せにします」
「……玲さん」
「それとこれ。本来はあの人の目の前で渡したかったけれどタイミング失ってしまいまして」

 玲がズボンの左ポケットから取り出したのは、黒いベルベットのケースに入った結婚指輪だった。玲がケースを開けて中身を私に近づけた。金色で真ん中には丸いダイヤモンドがキラキラと輝いている。

「あなたを大事にします。ずっと」
「……玲さん、ありがとうございます……!」

 玲は私に結婚指輪を渡すとぎゅっとめいいっぱい私の身体を抱きしめたのだった。彼の温かな温度にずっと包まれていたい。今はただ、そう思うだけだった。

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