政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
貴俊の意図が掴めず、小首を傾げて彼を見た。
「俺が欲しかったのは明花だ」
「わ、私?」
鼓動が弾むと同時に声が裏返る。貴俊から向けられる眼差しの熱っぽさが、明花の胸を張り詰めさせる。
無意識に息を止めると、時間まで止まったよう。
瞬きも忘れて彼の瞳に見入り、激しい緊張感に包まれる。
その場の空気に甘さが滲みそうになったそのとき、テーブルに置かれていた彼のスマートフォンがヴヴヴと振動音を響かせた。
即座に静寂が解かれ、時間が動きはじめる。
「悪い、仕事の電話だ」
画面を確認し、貴俊は立ち上がった。
「それじゃ私はこれで……」
テーブルの皿とカップをトレーに載せてキッチンに向かう明花に、貴俊が電話に応答しながら片手で〝ごめん〝という仕草をする。