政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
声は中からするのに、入口と思われるドアはノブにロープが巻かれ、簡単には開けられないようになっている。
『誰かいますか?』
不自然な状況に不安を覚えながら声をかけると、泣き声がぴたりと止んだ。
『ここから出られないの。出して』
女の子が弱々しい泣き声で訴える。
どうしてこんな場所に閉じ込められているのか。誰にされたのか。
『わかった。ちょっと待って』
恐怖を感じたが、それより女の子を助けたい衝動に駆られたのだと思う。貴俊は無我夢中でロープを解き、壊れかけたドアを開けて中に足を踏み入れた。
湿気た埃の匂いが鼻をつく。その奥にいたのは、小さな女の子だった。
こんな子が、なぜ。
急いで駆け寄り、無事を確かめる。
『友達とかくれんぼでもしてたの?』