政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

その子は涙でぐちゃぐちゃになった顔をめいっぱい横に振った。


『じゃあ、お父さんかお母さんと?』


それもまた否定する。


『誰かに閉じ込められた?』


まさかと思いつつ尋ねると、女の子は否定も肯定もしない。
幼心に事件に巻き込まれたのではないかと考え、一緒に交番に行こうと手を掴んだが、激しく抵抗する。


『おかあさんにおこられるから』


鼻をすすりながら嫌だと言う。
なるほど、心配をかけたくない気持ちならわかると次の提案をした。


『じゃあ、おうちに送っていってあげる』
『かえりたくない』
『どうして?』
『おかあさんとおねえちゃんが……』


そこまで言ってぐっと唇を噛みしめる。
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