政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

『お父さんは?』
『おとうさんはしごと』
『それじゃ、お父さんが帰るまで僕と一緒にいる?』


母親や姉とケンカでもしたのだろうと、気持ちが落ち着くまで付き合うことにした。
きっとそのうち気が晴れて家に帰ると言うに違いない。
公園のベンチに並んで座り、持っていた小さなタオルで彼女の顔を拭いてやると、くりくりした大きな目が頼りなく揺れた。


『そうだ、アメ食べる?』


先ほど友達と分け合って食べたアメの残りがあったはず。ポケットを探り、小さな包みを差し出した。白地にイチゴ模様が描かれた袋に入っているのは、貴俊のお気に入りであるイチゴ味のアメだ。

女の子はそれを夢中で食べた。舐めていられずに噛み、もうひとつ欲しいとねだる。

そうしているうちに彼女は新しい母親がいること、姉ができたことなど自分の境遇をぽつぽつと話しはじめた。
それを聞き、最初は彼女の父親が再婚して新しい家庭を築いたのだろうと思った。

ところが話が進むにつれて、雲行きが怪しくなっていく。ご飯はあまり食べられず、毎日家の掃除や洗濯をしていると。うまくできないと母親に叱られるのだと。
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