政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

義母にきつく制されるため、弱い立場の父も手立てがなかったのだろう。隠れてこっそり父が差し入れてくれたケーキをひとりで食べるのが、明花にとっての日常だった。

虐げられてきた年月の長さが、明花をそう簡単には解放してくれない。


「どうかしたのか?」


明花の異変に気づいた貴俊が、顔を覗き込む。


「あ、いえ、なんだか申し訳なくて……」
「なにに対して?」


感じたままを素直に告げると、貴俊は不可解そうに眉根を寄せた。


「こんなふうに誰かとお祝いするのは初めてで。私なんかがいいのかなって」


ずっと日陰で生きてきた身の自分が、貴俊のような華々しく素晴らしい人の妻として一緒に歩んで本当にいいのだろうか。

政略結婚から想像していた状況と、現状とのあまりの違いを未だに飲み込めていない。
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