政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
(私は貴俊さんに優しくされていい人間じゃないから)
一度マイナス思考に陥ると、底なし沼のようにずぶずぶとはまってしまう。
『他人のものを盗った人間の子どもも泥棒と同じ。恥を知りなさい』
罵倒された日々は、明花に深く濃く染みついていた。
「明花」
テーブルの上で手を組み、貴俊が明花を真っすぐ見る。
「……はい」
「明花は人から後ろ指を差されるようなことはなにもしていないよ。たしかにキミのご両親は人の道を踏み外したのかもしれない。でもそれはご両親の問題であって、キミ自身とは別問題。明花にはなんの落ち度もない」
貴俊は優しい声色できっぱりと断言した。
「両親の問題であって、私の問題では……ない」