政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

中庭で素敵なひとときを過ごした明花をただならぬ空気が包み込む。
貴俊とのお見合いのときとも、初めてのデートのときとも違う。たぶん人生史上、類を見ない緊張だ。
貴俊より先にお風呂を済ませ、寝室で待つように言われた明花は、所在なく部屋の隅っこに突っ立っていた。

(なにをしていたらいい?)

こういうときに女性はどうしていればいいのかがわからない。
ベッドで寛ぐなんてもってのほか。窓辺のソファに座るのも無理。
ただただ、広い空間の端で胸を張り詰めさせて待つ以外にない。

ベージュとグレーの淡いトーンで統一されたその部屋は、シンプルなコーディネートだからこその高級感がある。センスのよさはほかの部屋と同様だ。
さすが貴俊さんなどと考えて気を紛らわせていると、いよいよドアが開き、彼がやって来た。

尋常じゃない音を立てた心臓に自分でびっくりする。


「そこでなにを?」


不思議そうに問われ、体はますます直立になった。
背中に定規どころの話ではない。柱に縛りつけられている錯覚すらある。
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