政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
「あ、あの、貴俊さんを待って……ました」
「そこに立って?」
「……はい」
どうか彼の目には異様な人間に映りませんようにと祈る以外にない。
「おいで」
ふっと笑みを零した貴俊が手を前に出すと、それまで微動だにしなかった明花の足がふらりと一歩出た。
まるで操り人形のよう。糸につられて動いているみたいだ。
一歩、また一歩。ふたりの距離が縮まり、彼の手が明花の手首に触れた。
「震えてる?」
ついビクンと肩を揺らしたせいだろう。貴俊が目を細めて首を傾げる。
「ちょっと緊張しているだけです」
本音を言えば、ちょっとどころの話ではない。恋愛経験がない明花にとって、こういうシチュエーションは初めてだから。