政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

どれだけ庭でぼんやりしていただろう。
いつの間にか太陽は随分と傾いている。強い日差しが庇の中に差し込み、明花を燦々と照らしていた。
プールに張った水面が乱反射させた光で思わず目を閉じる。


「夕食の準備をしなくちゃ」


自分にハッパをかけて立ち上がった。

食材は週末に貴俊とふたりでいったスーパーで調達済み。献立もチキン南蛮とほうれん草入りジャーマンポテトと決めている。
チキン南蛮は油で揚げず、フライパンで焼くヘルシーなもの。ジャーマンポテトには栄養バランスを考えてビタミンやカルシウム、食物繊維が豊富なほうれん草を加えることで見た目も鮮やかになる。

料理に没頭していると、余計な雑念から逃れられるのがいい。

ゆっくり調理を進め、貴俊が帰宅したのは午後七時を回った頃だった。
貴俊に暗い顔は見せたくない。笑顔で出迎えた。


「おかえりなさい」
「ただいま」


もう何度もこうしているのに、未だに照れくさくて目を逸らしてしまう。それもこれも貴俊が素敵過ぎるからにほかならない。
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