政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
今日はいつも以上に彼の目を見られず俯く。明花の存在は桜羽グループにとってマイナスだという義母の言葉が蘇ったせいだった。
「明花?」
異変を感じ取ったのか、貴俊が腰を屈めて顔を覗き込む。
「なにかあったのか?」
「いえ、なにもないです」
なんとか取り繕って、リビングへ先に向かう。
「今夜はチキン南蛮にしてみました。油で揚げていないので、さっぱりと食べられると思います。付け合わせはジャーマンポテトにしたんですが、貴俊さん、じゃがいもお好きですよね」
肩越しにチラッと振り返り、献立を披露したが――。
「ちょっと待て、明花」
貴俊に手を取られ、振り向かされた。
「本当になにもなかったか?」