政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
「本来なら長女が嫁ぐのが正しいのだから、私は身を引くべきだと。愛人の子じゃ、桜羽グループの名を汚すだけだと」
貴俊が盛大なため息をつく。お腹の奥から吐き出したような、とても深い息だった。
「俺ははなからキミのお義姉さんとの結婚は望んでいない」
その言葉なら明花も覚えている。最初から明花を選んでくれていたと知り、とてもうれしかったから。
「明花が桜羽グループの名を汚す? 意味がわからない。そんな馬鹿げた話があるか」
貴俊は珍しく声を荒げたあと、明花の肩を引き寄せた。
「明花は、そんな声に耳を傾ける必要はない。大丈夫だから不安になるな。なにも心配しなくていい」
優しい声色で明花のこめかみにキスをする。
「俺は明花を手放すつもりもなければ、離婚するつもりもない」