政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
片野不動産で働きはじめて間もなく、再就職先を突き止めた照美と佳乃の嫌がらせは例に漏れずあった。明花を誹謗したFAXやメール、クチコミサイトへの悪意ある書き込みなど、内容や手口がこれまでと同じ。
そのときは社長をはじめとした三人とも、こんなの気にしないでいいと全然取り合わなかったため、明花も辞めずに済んだ。
比較的規模の大きな企業で働いていたときは、会社の評判や社内の雰囲気が悪化するからと人事部にそれとなく退職を促されたものだった。
片野不動産のようなアットホームな会社だからこそ続けてこられたのだろうが、さすがに今回はダメなのかもしれない。
おそらく〝義姉の婚約者を奪った〟といった内容が書かれていたのだろう。
やっぱり愛人の子ども、人のものを奪うのだと思われたに違いない。
深く大きなため息が漏れた。
「お昼ご飯、どこで食べよう」
すっかり食欲は失せたが、こういうときこそ食べたほうがいい。
(せっかくだから、めったに入らないようなおしゃれなお店にしようかな。次の就職口も見つけないと)
以前の明花だったらなにも食べずにいただろう。前向きになれるのは貴俊のおかげだ。