政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

「明花さんは人のものを奪うような人じゃないって、私も隆子さんも知っていますから。もちろん社長も。だから前に同じようなことがあったときも無視し続けたんですよ? 義母だか義姉だか知りませんけど、人間性がおかしいのは自分たちだってどうして気づかないんでしょう」


万智は憤懣やるせないといった感じに鼻息荒く、テーブルを拳でトンと叩いた。

再び店内の注目を浴びてもなんのその、「本当にムカつく」と眉根をぐっと寄せ、眉尻を吊り上げる。
今まで同じようなことが起こるたび、明花は腫れ物扱いだった。遠巻きに眺めるだけで、誰も触れてこようとはしない。

それなのにここには明花のために、こんなにも怒ってくれる人がいる。貴俊だけではない。明花を信じてくれる人がここにもいた。


「……ありがとう、万智ちゃん」


胸が詰まり、目の奥がジンと熱い。


「お礼なんてやめてくださいよっ。とにかく明花さんはなにも悪いことはしていませんから、辞めるなんて言わないでください。あんなのは無視していればいいんです。そのうち諦めるでしょうから。明花さんにはイケメン御曹司だけじゃないですよ? 私や隆子さん、社長もついていますから」
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