政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

包丁で切り分けて串に刺し、衣をつけて熱した油に投入。ジュワッという音のあとパチパチという軽い音に切り替わり、手早く引き上げる。


「加茂ナスの串揚げでございます。お好みでお手元の岩塩をどうぞ」


出されたナスは皮目には衣がついておらず、紫色が目にも鮮やか。繊細な飾り切りが美しい。


「いただきます」


まずは素材そのままを味わおうと、なにもつけずに口に運ぶ。揚げたてのため、ものすごく熱い。ハフハフ言いながら飲み込んだ。


「とろっとろですね」
「サクッとした衣とのバランスが絶妙だな」
「はい、本当に」


ナス本来の甘さが油と一緒に染み出してくる。


「おいしいです」


ふたりの感想にシェフは目礼で答えた。
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