政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
憎々しく明花を呼んだものとは一転、キーの高い声を出す。目線は貴俊に飛んでいた。
「……夫です」
「ちょっ、やだ」
小声でボソッと言いながら、長い髪を手なおしする。
「あ、あのっ、明花の義姉の佳乃です。初めまして」
振り返った貴俊を見て「きゃっ、写真よりずっといいっ」と小声で囁いた。
「桜羽です。大切な義妹さんと結婚したにも関わらず、ご挨拶もせずに申し訳ありません」
立ち上がり〝大切な〟を強調して挨拶する貴俊の声は、佳乃と対照的に冷ややかだ。
「いえいえっ、とんでもないです。私こそ、お見合いに出向かず失礼しました」
佳乃は体をくねらせ胸の前で手を振るが、貴俊は訝しげに目を細めて首を傾げる。