政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない
「ちょっと佳乃、なにを大騒ぎしているの」
今度は照美が現れた。
明花にピリッとした緊張が走る。
「あら、明花じゃないの」
明花にチラッと向けられた目に憎悪が込められたが、貴俊の姿を確認して瞬時によそ行きの顔に変わる。切り替えの早さは母娘共通だ。
「ちょっと待って、こちらはもしかして」
「お母さん、桜羽さんよ」
「まあ! 桜羽さん!? こんなところでお会いできるなんて運命なんじゃないかしら」
「お初にお目にかかります」
照美は佳乃同様に浮かれるが、貴俊の声は一本調子。感情がまるでこもっていない。
いや、それどころか冷淡さをいっそう増している。
「ここ、私のお店なんですの」
「えっ」
明花は思わず小さく声が出た。
(このお店がそうだったの?)