政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

「――退任?」
「ちょっとなに?」


横から佳乃が覗き込む。


「〝取締役退任の通達〟……って、なにこれ」


佳乃がファイルを手にして目を真ん丸にした。

(退任? お義母さんが取締役じゃなくなったの?)

明花にも事態が把握しきれず、貴俊の横顔を見上げる。


「そのままの意味ですよ。取締役の任期は二年。あなたは任期を終え、自動的に退任となりました。ちょうど今日の午後、手続きは完了。もちろん雪平秋人氏も了承のうえです」
「そんなっ、なにを勝手に」
「親会社である我々、桜羽ホールディングスの判断です。職務の怠慢、資金の私的流用など、挙げれば枚挙にいとまがない」


貴俊はさらに別のクリアファイルを取り出した。
おそらくそこには照美の犯してきた罪が書かれているのだろう。みるみるうちに顔が青ざめていく。
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