政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

「明花さんじゃないか」
「お義父様、こんにちは」


足を止めて頭を下げた。
お見合いのときこそ丈太郎には会えなかったが、結婚前に一度顔を合わせ、それ以降は何度か貴俊とふたりで実家を訪れている。

おおらかな丈太郎がいつも明花を歓迎してくれるため、愛人の子という負い目をまったく感じずに済むのはありがたい。
大企業のトップなら家柄を大事に考えても仕方がないのに、丈太郎は貴俊同様に出目は気にする必要はないと言ってくれているのだ。


「こんなところまで追いかけるほど貴俊に会いたかったのかね」
「いえ、違うんです。あ、会いたくないというのではなくて」


冗談だとわかっているが、返し方に戸惑う。


「父さん、変なことを言って明花を困らせないでくれ」


高笑いをする丈太郎を貴俊が仲介する。


「いやいや、夫婦が仲良しなのは一番。妻をもっと幸せにしようと、貴俊も仕事に精が出るだろう」
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