政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

「私は今でも十分幸せですが、桜羽ホールディングスの発展のためにも貴俊さんを精一杯支えていこうと思っています」
「それは頼もしい。お恥ずかしい話、私は妻を幸せにできなかった男なのでね、その点に関して私は貴俊には惨敗だ」


貴俊の母親は彼が幼い頃に家を出たと、結婚してしばらく経ってから秋人に聞いている。


「父さん、なにも今そんな話をここでしなくても」


貴俊は苦笑いだ。


「まぁそうだな。仲睦まじいふたりを見てついね。ともかく貴俊をよろしく頼んだよ」
「はい、承知いたしました」


にこやかに歩きだす丈太郎に続き、秘書が会釈をして通り過ぎていく。

ふたりの背中を見送り、明花は貴俊に「行こう」と足を促された。
毛足の長い絨毯が敷き詰められた通路を彼と並んで進む。一画にはゴージャスなアレンジフラワーやアーティスティックな絵画が飾られ、いかにも重要人物が詰めるフロアである。
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