政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

「ある程度想像はしていましたが、やっぱり立派な会社ですね。重厚感が漂っています」
「企業はどこもこういうものじゃないか?」
「そうなんでしょうか」


明花はいろいろな会社を転々としてきたが、ここまで素晴らしい社屋を知らない。


「私じつはグループ企業に勤めていたことがあるんです。片野不動産の前なんですが」
「知ってる」
「え?」


驚いて聞き返したが、ちょうど副社長室の前に到着し、貴俊が「入って」とドアを開けた。

黒を基調とした品格のある室内にはプレジデントデスクとチェア、応接セットなどが整然と並び、機能的な空間となっている。
付近ではここが一番高層なのだろう、目線の高さに建物はなく、眼下はまるでミニチュア。遠くに街並みが広がる。


「こんなに景色のいい部屋なら気持ちよく仕事ができそうですね」


いや、もしも明花なら窓の外ばかり見て、逆に仕事にならないかもしれない。
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