政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

「それは最初のうちだけ。そのうち壁に飾られた絵と同じようになるよ」
「太陽の傾きで色が変わるなんて贅沢な絵ですね」
「たしかに。とりあえずそこに座って」


クスッと笑い明花にソファを勧め、貴俊はデスクにある電話の受話器を手に取った。


「糸井、部屋まで頼む。とびきりうまいコーヒーもふたつよろしく」


ひと言添えて受話器を置き、貴俊は明花の隣に腰を下ろした。


「早速、見てもらってもいいですか?」


今日の本題である招待客リストを封筒から取り出す。二つ折りにしていた用紙を開いて彼に手渡した。
明花側の招待客は父親と片野不動産の三人でテーブルひとつ分だが、貴俊は総勢三百人にも及ぶ。新婦との格差が在り過ぎるため、それでも抑えたほうだ。

ひとりずつ丁寧に確認を進めているとドアがノックされ、男性が入室した。
手にしているトレーにはカップがふたつ並んでいる。

(この人が秘書なのかな)
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