政略婚姻前、冷徹エリート御曹司は秘めた溺愛を隠しきれない

「はい、では失礼します」


糸井は貴俊と明花の前にコーヒーを置いた。


「〝とびきりうまいコーヒー〟でございます」


貴俊の言い回しを大真面目に真似る。


「お手並み拝見といこう」


貴俊は不敵な笑みを浮かべてカップに口をつけた。


「まあまあだな」
「相変わらず手厳しいですが、精進します」


糸井は胸に手をあて恭しく目線を下げて続ける。


「突然、副社長の奥様がお越しになったものですから、社内が騒然としていますよ」


エントランスでの情報が、もう秘書室にまで届いているのかと驚く。取締役など社内の要人に関するものは、側近である秘書たちに素早く伝えられるのかもしれない。
< 252 / 281 >

この作品をシェア

pagetop