嫌われ者で悪役令嬢の私ですが、殿下の心の声には愛されているみたいです。

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 ――わ、私……ぃま。

「オルフレット様、お父様、すみません……大声をあげてしまって」
 
「いや、ロレッテの邪魔をした私が悪い」

(どうしましょう……お父様が落ち込んでしまったわ)

 学園での事はお父様に話して、誤解は解けている。それ以前から、デュックお父様は真面目なオルフレット様のことが大のお気に入り。

 夕飯の席でお酒に酔うと、オルフレット様を我が家の婿養子にとおっしゃる。

 ありえない、ことですのに。

〈コロネール公爵には悪いですが……ロレッテが僕と二人きりになりだなんて、嬉しい。もう一度、ロレッテの可憐な声で聞きたい……〉
 
(まあ、オルフレット様ったら、真剣な表情をされていると思ったら、その様なことを考えているなんて。でも、いまの問題は落ち込んてしまったお父様ね。今日の夕食、オルフレット様をご招待するのですし――あ、そうですわ)

 ロレッテは思いついた事をお父様話す。

「ねぇお父様。オルフレット様は前にウチで食べた、玉ねぎたっぷりのソースがかかった、ステーキが美味しいとおっしゃっていましたわ。今晩の夕飯に……」

 お父様はロレッテの話が終わる前に、瞳を光らせた。

「そうなのか! こうしてはいられない……料理長に頼んでたくさん用意させよう」

 まずい方に、力が入ってしまったわ。

「オルフレット殿下、失礼させていただきます。夕飯を楽しみにしてくだされ!」

「ありがとう、楽しみにしている」

 意気揚々と屋敷に戻っていく、デュックお父様を見送った。
 


「ロレッテ、デュック公爵のあのご様子じゃ、たくさんステーキを用意しそうだね」

「ええ、そうですわね。デュックお父様はオルフレット様を気にいってらっしゃるから……フフ、覚悟をしたほうがいいと思いますわ」

「ハハ、そうだね」
「……フフ」

〈ロレッテ、そんな意地悪く笑って。しかし、前に招待されたときの、夕飯の量はすざましかったからな……これは覚悟するか〉
 
(ほんと、あの日のオルフレット様は大変でしたものね)


 テーブルの紅茶を見て気付く。

「あら、紅茶が冷めてしまいましたわ。新しくご用意します」
 
「いいや。この紅茶を飲み終わってからでいいよ」

 そう言うと。
 オルフレット様は止める前に、冷めた紅茶を飲んでしまった。

 ――あっ。

「ロレッテ、その様な顔をしなくていい。また温めてもいいが、よい茶葉は冷めても美味しい。ロレッテ嬢も飲んでごらん」

〈公爵家の茶葉は良い茶葉だ、勿体ない〉
(勿体ない……)

「では、いただきます」

 オルフレット様の言う通り、冷めても紅茶の風味が損なわれず美味しかった。今まで紅茶は温かいものでと思っておりましたが……これはこれでありです。

「どう?」

「オルフレット様のおっしゃる通り、冷めても美味しい」

〈よかった、ロレッテに気に入ってもらえたみたいだ〉

 オルフレット様は微笑み、バタークッキーに手を伸ばした。

(オルフレット様はなんと言うかしら?)

「おぉこれは美味しい! このバタークッキーはどこの店で買ったんだい?」

「このクッキーは買ったものではなく、作ったのですわ」 
 
〈やはり、そうだと思った〉
(えっ?)

〈ロレッテが作った物はすぐに分かる〉 
(ええ? お分かりになる?)

〈あんなに可愛い、満面な笑みを見せられたら――おのずと分かってしまうよ。しかし、今日は目のやり場に困るがな〉
 
(目のやり場に困る?)

 オルフレット様の視線をたどり、自分の姿をみて見て驚く。無意識にロレッテはテーブルに身を乗り出していたのだ。
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