【SS】夜に堕ちる

夜に堕ちる



 オレンジ色のライトが部屋をうっすらと照らす。

 ベージュのソファーに頭をあずけて、ほおで革の感触を味わった。

 テレビの横のスピーカーから流れるのは、いわゆるチルいジャズミュージック。


 苦いコーヒーが美味しく感じる時間。

 人工の星がまたたく窓の外をながめて、目をつむった。




「眠い?」




 吐息が多く混じったやわらかい声を聞いて、出てきたんだ、と心のなかで思う。

 心地いいまどろみに身を任せていると、ソファーの左が沈んで、右の髪をさらりとなでられた。

 それから、首筋に温かくやわらかいものがふれて。ウッディの匂いが鼻先をくすぐる。


 私を夜に堕としたひと。とくとくと、鼓動が速くなる。




「俺、もうすこし仕事するから。あとでベッドに運んであげる」


「…」
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