天才外科医は激甘愛で手放さない~絶対に俺の妻にする~
さすがに食事をする気にはなれず、少し頭が冷静になったときに私は休憩室を出た。
結局、再会した後も瀬七さんに騙されていたということなの?
不思議と悲しみや怒りの感情というのは湧かず、ただぼんやりと二回も信じた自分が馬鹿だったな、と思う。
午後の仕事をこなした後、いつもの時刻に仕事を終える。
更衣室で私服に着替えた後、スマホを確認すると一時間くらい前に、瀬七さんからメッセージが届いていた。
【連絡が遅くなってごめん 昨日話せなかったから今夜電話できないか】
瀬七さんに話したいことは山ほどあるが、今はそんな気力さえ湧かない。スマホの電源を落とし、バックに入れる。
長い廊下を歩き従業員専用出入り口を目指していると、前から白衣を着た年配の男性がこちらに歩いてきていた。
距離が近くなるにつれて、この病院の霧島院長だとわかる。
普段現場にくることはないので、私も会話をしたのは数えるくらいだ。院長は私が何科の看護師なのかも知らないだろう。
「お疲れ様です」
すれ違うときに、軽く会釈をして院長に挨拶をする。
すると彼は私を通り過ぎた直後、その場で足を止めた。
「君、オペ室看護師の奥名さんだね?」