天才外科医は激甘愛で手放さない~絶対に俺の妻にする~

 え……?

 驚いて振り返ると、院長は見るからに不快感を露にした表情で私を見ていた。

 「奥名さんが西堂くんに付きまとっていると、私の耳にも入ってきている。君が心を変えないというのなら、この病院から出て行ってもらうよ」

 院長の言葉に耳を疑う。

 瀬七さんに付きまとっているつもりは微塵もない。まさに、寝耳に水だ。

 「私は、西堂先生につきまとってなんか……」

 「シングルマザーで君も大変なんだろう。人に頼りたい気持ちは十分分かるが、西堂くんと恵の幸せに君は邪魔でしかない」

 恵さんの名前が出てきた瞬間、なんとか保っていた気力の糸がぷつりと切れる。

 院長が言うくらいなら、瀬七さんと恵さんの関係は確実なのだ。

 ようやく現実を受け止めた私に、院長はとどめをさすように厳しい眼差しを向けてくる。

 「私はこの病院よりも、娘の幸せの方が大切なんだよ。君が西堂くんを諦めないというのなら、どんな手でも使うつもりだ。心に留めておいてくれ」

 院長の言葉が重く心にのしかかる。

 私は何も、知らなかった。

 でも、四年前に瀬七さんと体の関係を持ったし、瀬七さんとの子供の栄斗と産んで、一緒に三人で家族のようなこともした。

 私が恵さんを傷つけるようなことをしたのは、たしかなのだ。

 「……っ、私は……瀬七さんとはもう会いません……申し訳ありません……」
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