あの一夜で身ごもりましたが、結婚はいたしません ~天才心臓外科医の猛攻愛~

 東園寺と笹本医師の会話が耳に届き、我に返る。

 ひかりの身に何が起きたのか、今は何も分からない。彼女が俺のことをどう思っているのかも。

 でも、絶対に今の状態ではいられない。

 ひかりはきっと誤解をしているだろうし、俺も嘘が本当のように伝わっていてやりきれない。

 ひかりを想うこの気持ちにも、終止符を打つことはできないだろう。

 まずは院長の誤解を解き、すべてを知っている恵と三人で話す必要がある。

 「ひかり、すまない」

 俺は……ひかりが俺の顔を見たくないというのなら、この病院から去ってもいい。

 でも、真実を明らかにして、最後にどうしてもひかりと話したい。

 好きだと告げられなくても。この想いが実らなくても。

 彼女に“ありがとう”とだけは伝えたい。

 ひかりに恋をして、栄斗君に出会えて、俺の人生は彩られたのだから。
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